読書感想文書いてみた『水たまりで息をする』高瀬隼子著

高瀬隼子氏と言えば、昨年『おいしいごはんが食べられますように』で芥川賞を受賞した今注目の作家さんです。娘がその本を読み、絶賛していたので、先日図書館に行き、高瀬隼子氏の著書に『水たまりで息をする』を見つけ、読んでみることにしました。この本も令和3年度の芥川賞候補に選ばれている良書です。読み手にいろいろな考えを思い巡らせる素晴らしい本です。少し大人向けの描写もあるので、高校生でも大丈夫と思いますが、その辺は配慮しておすすめください。久しぶりに感想を書きたくなりました。ネタバレを含みますが、それでもよいという方はここまま読み進めてください。では。

『水たまりで息をする』/高瀬隼子著を読んで~坂谷謙一~

予備知識無しでページを開いての1行目が目に飛び込んで来た時、私は何か口に含んでいたらきっと噴き出していたであろうほどの衝撃を受けた。なぜなら出だしが「夫が風呂に入っていない」だからである。何だ?何だ?この主人公の相手(夫)はタイトルにある水たまりで身体でも洗っているのか?どういうことだ?と疑問で頭がいっぱいになった。読み進めて行けば、そのいきさつはおのずと明らかになるだろうとページをめくっていった。しかし結局、夫が風呂に入らない(入れない)原因、理由がどこにあるのか最終的には分からずじまいだった。もちろん想像させる描写はあるのだが、確定ではない。そもそもきっと、作者の主眼はその謎解きではないのだ。その謎解きに終始し、最後にどんでん返しのオチがあって読者がなるほどと膝を打つ、そんな本ではないのだ。

また『水たまり』は何を比喩しているのであろうか。そこで息をするというのはどういう意味なのだろうか。端的に水の中で息をするのは魚である。本の中にも、偶然台風の後に出来た水たまりで見つけた魚を持って帰って育てるという描写がある。しかし魚に特段愛着があるでもなく、しかしながらまったく世話しないわけでなく、といった描写がなんとなくリアルだった。ただそこから何を読み取るという事ももないのだが。

私がこの本で感じたのは、『在る』事にこだわらずとも、在るものは在って、こうあるべきもこうしないといけないのもなくて、ただ自分がしたければすればいいし、損得や周りも自分の『在る』にはあまり関係ないんだという達観でも諦めでもない受け入れがあるんだなという事。受け入れは、安息をもたらすのだ。主人公が夫の生き方を受け入れたんだと感じ取れる描写があり、私はそこに主人公から夫への愛を感じた。こう書くと主人公がとても心優しく、強く大きな心でどんな困難や不都合、夫の奇行でも受け入れるような印象も持たれるかもしれないがまったくそんな事はない。むしろ私達が普通に抱く違和感や苛立ち、困惑がはっきり描写されているだからこそ、自分だったらとわが身に置き換えながら読み進める事が出来るのだ。

突然だが、私はおそらく他人よりは体臭はないように思う。もちろん毎日お風呂にも入っているし、ジョギングや空手といった適度に運動もしている。食事にも気を遣い、お酒もあまり飲まない、当然タバコも吸わない。汗をかいた後のTシャツを嗅いでみても直後であればほとんど匂っていないであろう。これが私なのだが、それはこれを私が気にいっているのであって、誰かに強制されたり、誰かの目を気にしての行動ではないのである。そこに立ち返ってみると、どこかで体臭が出るような生活習慣であっても、私がその生活を望むならそれはそれで構わないのでは感じた。きっと私の妻は、本書主人公よりあからさまに嫌悪感を出して来るであろうが。反対に、妻が生活習慣が激変して体臭がキツくなるような生活を送り出した時、私はどう接するであろうか。すぐには答えは浮かばなかった。

それにしてもこの本は、本当に読み手様々な事を想像させる、連想させる、考えさせる。それでいてまったく回答を示さない。ラストに夫がどうなったのかもいろいろに解釈、想像が出来る。だから良いのであろう。飼っていた魚を川に捨てに行く描写もそうだ。実際にあの魚がどうなったのか誰も分からない(ここはネタバレ)。私はビビりなので悲しくなりたくないので、分からない事は楽観視するようにしている。例えば魚は、誰かが見つけて持ち帰って飼っているとか。夫もしばらくして、ひげ面でひょっこり戻って来たりして。作者が自由に考えていいよって言ってくれるなら、私はそう考えたい。

これもネタバレだが、ラストの水たまりで息をする魚を見つけた主人公はこの魚を持って帰って家で飼う事になるのだろうが、どのような想いで飼うのであろうか。たかが魚、たかがペット、しかしまったく愛着が湧かないならそもそも手間をかけて飼わない。でも溺愛というわけではないだろう。その辺の関係性、距離感のリアルさを目にした時、自分もふと日々の生活を振り返ってみたくなった。そんな印象を受けた本、というのが感想である。

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以上、いかがだったでしょうか。普段ですます調で文章を書いているので、である調で書いていても途中でですますを使いたくなってしまいます。案外口調の統一って難しいですね。400字詰め原稿用紙で4枚程度にはなっていると思います。実はこういう答えなのない系の小説は苦手なんです。小さい頃からも道徳が苦手で(笑)。でも本当にいろいろな事に思いをはせながら読みました。夫や主人公の母親の気持ちも分かるし、夫の上司の苦慮も垣間見えます。しかし夫を責めるのは違うし、病院につれていっても処方された薬で改善するとは思えないし、そもそも改善しなきゃならないのか、誰が誰のために改善しろと言うのか、本当に考えされられ続けます。とても面白い本です。次はこれを踏まえて、娘に『おいしいごはんが食べられますように』を借りて読みたいと思います。

 

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