生徒には、セルフジャッジ能力を○

大阪・高2自殺:桜宮高体罰教諭、懲戒免職を決定−−市教委 毎日新聞 2013年02月13日 東京朝刊

 大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将の男子生徒(当時17歳)が自殺した問題で、市教委は12日、教育委員会会議を開き、自殺の前日に体罰を加えた顧問の男性教諭(47)を懲戒免職処分にすることを決めた。体罰による懲戒免職は全国でも異例だが、市教委は自殺という結果の重大性や、体罰が常習的だった点を重視したとみられる。

 市の人事委員会が13日にも免職処分を了承する見通し。市教委は本人に処分を通知した上で正式発表する。

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 大阪の高2男子が、顧問教諭の体罰が原因で自殺した問題に端を発し、柔道女子日本代表選手たちの、監督による体罰の告発や、全国のいたるところで、学校の部活での体罰による指導が次々と報道されています。そんな中、ようやく、生徒を自殺に追いやった教諭の懲戒免職が決まりました。暴行傷害罪で逮捕されているわけではありませんから、氏名は公表されていませんが、社会的制裁は大きいと思います。校長も更迭のようですが、校長が懲戒免職にならないのは、市教委の姿勢がまだどこかで、学校に甘いせいなのでしょう。

 また、この教諭、今日の毎日新聞朝刊によると、部活の練習試合に時に「たたかれてやるのは調教されている動物と一緒や」と生徒を叱責したそうです。こうなるともう、この教諭のしていることは指導ではありません。自ら自分が指導者ではないと認めているのも一緒です。本当に誰も、この教諭の傍若無人な振る舞いを止められなかったのでしょうか。悔やまれます。

 罰を振りかざして、それが嫌なら言うとおりにやれというような指導では、けっして生徒の能力は伸びません。指導者が自己満足して終わりです。当然、能力が伸びていないので、試合などで思った成果は上がりません。すると、成果が上がらないのは、生徒のやる気が足りないからだ、やる気を出させるにはより重い罰が必要だと考え、体罰のスパイラルに陥ります。そして誰かが死ぬまで、それが間違っているとも教諭は気づかず、エスカレートしていったのです。本当に、生徒達はつらかったでしょう。

 しかしまた、「罰を回避したかったら、言うとおりにしろ。結果を出せ。」のやり方が、指導者に、これが一度(*体罰でなく別の要因で)うまくいったように見えてしまうと、もっと重い罰を設定したら、それを回避するために、もっといい結果が出るんじゃないかと、これもまた体罰のスパイラルが待っています。柔道女子代表選手への体罰はこのケースだと思います。

 要するに、体罰で指導する指導者は、結果が良くても悪くても、生徒が言うことを聞いても聞かなくても、結局理由をつけて、体罰を行うのです。しかし、体罰容認者はきっとこういうでしょう。「では、生徒達に言うことを聞かせるには、どうしたらいいんだ?」と。

 そもそも『生徒達に言うことを聞かせる』という発想が間違ってます。生徒に、自発的に指導者にアドバイスを求めるようになってもらわないといけないのです。その為に必要なことは、生徒の『セルフジャッジ能力』です。

 まず、自分達の現状を把握し、目指す目標を設定し、それに向けての練習方法を考える、それを生徒達にやらせるべきです。そしてもし練習中に気合が入らない、朝練に遅刻して来るといった、目標に向けての練習が出来ていない状況になったなら、そこは体罰ではなく、生徒達のセルフジャッジの出番です。今のままでいいのかと。このやり方で目標が達成できるのかと。原因と結果、努力と成果の関係性を、生徒は自分達で見極めなければならないのです。

 気がつけば、みんなで相談して、態度を改めるでしょう。自分達で気合を入れ直すでしょう。しかしそこでもし、生徒から目標を放棄するような発言があれば、指導者が今一度、真意を問うことも必要です。それでももうあきらめるというなら、指導者はその結果を受入れるべきです。この覚悟がなければ指導者は務まりません。

 指導者の熱気が生徒の心を動かすというのもあるでしょう。生徒まかせにしてそんなに良い結果が出るとも、私も思っていません。しかし指導者のエゴや保身、自己満足が入った押し付けの指導は、しょせん生徒の心には届かないのです。生徒がセルフジャッジをし、現状を変えたいと、指導者に指導を求めてきて、初めて本当の指導が出来るのです。

 

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